2024.06.01
松山猛、小原礼、高野寛、高田漣、石川紅奈、尾崎亜美、相原裕美監督が、加藤和彦への想いを語る。
5/31(金)初日舞台挨拶レポート
相原裕美監督は、「前作『音響ハウス Melody-Go-Round』で高橋幸宏さんに出演いただいています。その初号試写の後の打ち上げの時、“トノバンはもうちょっと評価されてもいいんじゃないかな……”とポツリと言ったことが最初のきっかけなんです」と語る。その後、約50人へのインタビューを敢行し、アーカイブを含め100時間にも及ぶ膨大な映像を構成し、本作を完成させた。監督はそれを振り返って「本当に大変でしたね。インタビューの内容も本当に多岐に渡って本当に面白くて、自分ではとてもカットできないと思いました。最初に上がった荒編集が6時間半ぐらいで、“ここはやっぱり切ってはだめだろう”とかいうところがたくさんありすぎて、若いスタッフに編集で入ってもらいました。そしたらバッサバッサと切っていって(笑) “え!ここ切っちゃうの?”とかどうしても僕は思ってしまうんですが、そのスタッフのおかげでこの尺に収まりました」と制作時の苦労を振り返る。
ザ・フォーク・クルセダーズ「帰って来たヨッパライ」、「イムジン河」などの作詞を手がけ、登壇者の中では加藤と最も付き合いが古い松山猛は、「こないだまで半世紀の仲か……と思っていたら、それも過ぎて60年に近い付き合いになってしまいました」と振り返り、「この映画では、僕の知らない彼のことを語る人がたくさんいて、皆さんにとっても興味深いものになっていると思います」と語る。
サディスティック・ミカ・バンドのベーシストで数々のレコーディングやライブを共にしてきた小原礼は、そのことを振り返り、「常にニコニコしていて、誰かにこうしてほしいというよりは、好きなことをやってほしいという感じでしたね。僕はトノバンが怒っている顔をほとんど見たことがないんです」と振り返る。
加藤と親交の深かった尾崎亜美は、「美味しいお店を本当にたくさん紹介していただいて、食事をご一緒して、ライブでも共演することができました。私にとって本当に印象に強い方で、トノバンに会っていなかった人生は、実際に色々なことを経験した今とは全く違うものだったんだろうな……と思います」と語る。
加藤に触れることになるきっかけはYMOだったという高野寛は、「加藤さんが美輪明宏さんの「メケメケ」を歌っているカバーのバージョンがあって、それが自覚をした最初かもしれません。子どもの頃、『帰って来たヨッパライ』はレコードを持ってないのに無意識に歌っていたんですよ」と語る。高野は本作のエンディング曲「あの素晴しい愛をもう一度〜2024Ver.」のアレンジを担当。これを振り返って、「打ち合わせも含めると延べ1年ぐらいやってたのかな……。僕が今まで関わったレコーディングの中で参加人数が多くて、世代的にも10代の学生から70代の方まで関わっていて、こんな曲はないですね。幸宏さんの想いが映画の根本にあるので、自分もそれを歌に込められるといいなと思いました」と振り返る。
石川紅奈は、「あの素晴しい愛をもう一度〜2024Ver.」の歌とウッドベースを担当。「「あの素晴しい愛をもう一度」は昔から知っていましたが、加藤和彦さんが作っているというのを知ったのは意外と最近です。そういう若い方はけっこういるんじゃないかということも、今回参加させていただいた理由です。初めて聞いてもスッと心に入ってくるのがこの曲の特徴で、シンプルゆえ世代を超えて響く曲なんだと改めて気づかされました」と語る。
「あの素晴しい愛をもう一度〜2024Ver.」に参加した高田漣は、「「あの素晴しい愛をもう一度」は毎年演奏しているけど、この曲に限らず、加藤さんの曲は知っているつもりでも、演奏したり譜面に起こしたりすると毎回発見があるんですよ。こんなコードだったんだ……とか、こんなエッセンスがあるんだとか。それは演奏家として幸せな気分で、日本の作曲家でこんな人は少ない気がするんです。今回、そんな加藤さんのパワーを感じることができました」と語る。
監督は、「今回、加藤和彦さんの再評価にもつながればいいなと思うんです。書籍が出たり、CD集が出たり、ライブもあります。加藤さんに関するものがたくさん出ていきますので、ぜひ体験していただきたいです。映画は2時間ぐらいしか長さがないから、曲も全部はかけられないんです。だから、CDを買ってみたりしてほしい」と締めくくった。